えー、ご存知の方もいると思いますが、拙著「地下鉄のギタリスト Busking in London」の続編として、「地下鉄のギタリスト 第2章 激闘編」が、電子書籍で発売中です。
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こちらは、事情があって収録できなかった話や、ロンドン地下鉄以外での出来事なども掲載されています。
実は、電子書籍版には、第1章、第2章ともに、未発表日記が5話づつ追加されています。これらも結構面白いですよ。
「第2章 激闘編」から一部紹介します。
BGMを聴きながら読んでいただけると、いっそうロンドンを感じられるかと思います。
今日のような寒い日の出来事でした…
=今度儲かったら=
BGM 「Streets of London」
先日バスキング中、写真学校に通ってるという日本人の女性から声をかけられた。卒業課題だか何だかでバスカーの写真を撮りたいとの事。僕も自分の写真が欲しいのでギブ&テイクという事でOKした。
きょうは、その写真が出来たということで、バスキングが終わってからキングスロードにあるマクドナルドに入って写真を見せてもらっていた。ロンドンでマクドナルドに入ることなど滅多に無いのだが(節約の為)、なにしろ夜8時頃になるとキングスロードといえ、ほとんどの店は閉まっている。外では寒いので二人ともTeaだけ注文し、暖かい店内で写真を眺めた。写真はモノクロで質感も良く、構図もバッチリで素晴らしいものだった。
そんなこんなで30分ほど談笑し店を出た。
階段の下にホームレスが座っていた。2月のロンドンの夜、外の気温は零下に近い。
ホームレスとバスカーは、小銭を貰って生活している点では一緒、どうしても他人事とは思えない。ましてこの寒さだ、イギリスでは毎年何百人というホームレスが凍死している。
足が止まった。
僕はギターケースから小銭の入った袋を出すと、一掴みの小銭をホームレスに差し出そうとした。
その時、ホームレスが口を開いた。
「おい兄ちゃん、あんたバスカーだろ? 気持はありがてえが、バスカーからカネ貰うわけにはいかねえな。兄ちゃん達だってこの寒い中、ギター弾いて歌って、なんとか生活していってんだろ。俺達はただ座って恵んでもらってるだけだ。申し訳なくてバスカーから貰うわけにはいかねえよ。まあ身体に気をつけて頑張ってくれや。いつか兄ちゃんにも良い事があるさ。ゴッド ブレス ユー」
…まさかホームレスから激励されるとは思わなかった。おまけに「ゴッド ブレス ユー」なんて言葉までもらった。
僕は、「きょうは、いつもよりだいぶ儲かったんだよ。だからこれで温かいものでも食べてよ」と再びお金を差し出した。
すると、彼は少しの間考えていたが、「そうかい兄ちゃん、じゃあ、ありがたく頂くよ」と言いお金を受け取ると…
「よーし、今度俺が儲かったら、そこの高級レストランで御馳走してやるからな」と言ってウインクした。
後日談
おそらく、御馳走してもらうことは無いと思うのだが、ホームレスながら英国らしいユーモアのある返答に、嬉しいような、悲しいような、複雑な心境でした。
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