魂のバスキング回想編 「Hero on the Tube R.I.P」。

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僕が、ロンドン地下鉄でバスキングしていた頃、交代時によく会う盲目のバスカーがいた。名前は、Mark Campbell、イギリスの新聞Evening Standard web版に訃報が掲載されていた。

彼と会う場所は、グリーンパーク駅のピッチ1。ほとんどここだけだった気がする。毎回付き添いの人がピッチまで連れて来てくれて、僕が終わる5分前くらいから横でじっーと待っている。

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体が大きく、すこし強面なので、初対面の時、何も言わず後片付けをして帰ろうとしたのだが、かなり大きな声で、「やあ、素晴らしい演奏だねえ! 俺もギター弾けたらいいなあ。俺はこの通り目が見えないんだ。でも口笛が得意だからね。口笛でバスキングしてるんだよ。よろしくっ!」と声をかけられた。

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ロンドン地下鉄のバスカーには、2種類いて、僕を含めて半分くらいは、シャイで口下手、1匹狼の世捨て人みたいな感じなのだが、あと半分は、かなり社交的でいつもポジティブ、寛容で会話が面白い人だったりする。それと、意外かもしれないが、有名大学を卒業してたり、一流企業で働いてた人もいる。

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彼のバスキングスタイルは、口笛だけで、マイクもアンプも無い。というか必要ない。彼が魂から発する口笛は、駅の雑踏の中でも奇麗に響き渡るのだ。吹いてる姿を見てると、けして楽そうでもない。体を前後に揺らし、玉のような汗を流し、全身全霊で吹いている。

その後、彼は、交代時いつも僕を元気づけてくた。「最後の曲素晴らしかったね!」とか、「君の演奏聴くと心が和むよ」とか、必ずなにかしら一声掛けてくれた。

僕は、英語が得意ではなかったので、気の利いた返答ができず会話が弾まなかったが、彼は、そんなこと気にもせず、いつも明るかった。

記事の内容を読むと、彼はかなり博識で器の大きい人だったようだ。地域の人にも愛され、バスカー仲間からも尊敬されていた。

50歳という若さだったが、最期は、隣人やバスカー達に看取られながら、静かに息を引きとったとの事。

R.I.P whistling busker Mark Campbell.

今も、僕の心の中に、彼の澄んだ口笛と、力強い声が響いてくる。

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